【マキさん編・第1話】お小遣い制50代がアプリに挑戦。ビギナーズラックと、胃が痛むメッセージ試行錯誤の夜

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はじめまして、taroです。

私は地方の小さな専門商社で働く、どこにでもいる50代前半の会社員です。 我が家はいわゆる「お小遣い制」。毎月限られた予算の中で、昼食代やちょっとした飲み代をやりくりする、しがない中間管理職です。家では15年以上セックスレスで、妻からは「ただいま」と言っても顔すら見てもらえない、完全な空気のような存在でした。

「俺の人生、このまま誰からも男として見られずに終わるのか……」

そんな焦燥感から、ネットで見つけた「既婚者専用マッチングアプリ」に、清水の舞台から飛び降りる覚悟で登録したのが、先週のことでした。

月額の利用料は、私のようなお小遣いサラリーマンにとっては、決して小さくない投資です。数ヶ月分の趣味の予算を削る覚悟で挑みました。

マッチングアプリなんて、人生で一度も触ったことがない超・初心者。 プロフィール写真の撮り方なんて分からないので、会社の洗面所の鏡に映った自分の「ユニクロのワイシャツ姿(もちろん顔はカット)」を1枚。

自己紹介文には、格好いい言葉なんて思いつかず、「お小遣いの範囲で、仕事帰りに焼き鳥でも食べながら楽しく愚痴を言い合える方を探しています。真面目だけが取り柄です」と、等身大の文章を書いて公開しました。

「まあ、50代の冴えないおっさんだし、誰からも連絡が来なくて利用料をドブに捨てるんだろうな……」

そう諦めていた私に、Webの神様が「ビギナーズラック」という名の悪戯を仕掛けてきたのは、登録した翌日の夜でした。

奇跡の「いいね!」と、押し寄せる大パニック

土曜日の深夜、妻が寝静まったリビングで、恐る恐るスマホ(通知は完全オフ)からサイトを開いてみました。

すると、画面の通知マークに【1】という数字がついています。

「えっ……!?」

心臓がバクバクと音を立てました。 そこには、40代半ばの「マキさん(仮名)」という女性からの「いいね!」が届いていたのです。

マキさんのプロフィール写真は、居酒屋でビールジョッキを片手に持った、少しふくよかで優しそうな雰囲気の後ろ姿(顔はぼかしてあります)。 自己紹介には「夫とは会話のない同居人です。お洒落なお店は苦手なので、赤提灯で楽しく飲める飲み友達が欲しいです」とありました。

「この人なら、僕の限られたお財布の範囲でも、お互い気兼ねなく楽しめるかもしれない……!」 私は舞い上がり、夢中で「いいね!」を返しました。

画面に大きく表示される【マッチング成立!】の文字。 50歳を過ぎて、これほど脳汁が出るような興奮を味わったのは初めてでした。しかし、ここからが本当の「地獄の試行錯誤」の始まりだったのです。

一通の返信に30分。胃が痛むメッセージの試行錯誤

マッチングしたものの、私は「次に何をすればいいのか」が全く分かりませんでした。 「最初のメッセージは男から送るもの」とネットに書いてあったので、慌ててスマホを握りしめました。

しかし、文字を入力しようとして手が止まります。

「普通のLINEみたいに『マッチありがとうございます!よろしくです!』でいいのか? いや、軽すぎるか? でも、おじさん構文みたいに絵文字をたくさん入れたらキモがられるよな……」

会社のプレゼン資料を作る時以上に、頭をフル回転させました。 書いては消し、消しては書き……。気づけば最初の1通を送るまでに30分以上が経過していました。

悩みに悩んだ末、私が送ったのはこんな大真面目な文章でした。

「マキさん、はじめまして。taroと申します。勇気を出してアプリに登録したばかりの初心者なので、マッチングできて本当に嬉しいです。 私も仕事帰りに赤提灯で一杯やるのが大好きです。お互い家庭の愚痴でも言い合いながら、気楽にお話しできたら嬉しいです。よろしくお願いします」

送信ボタンを押した後、「真面目すぎてつまらない男だと思われたかな……」と、激しい後悔と不安に襲われました。翌日は、仕事中もスマホが気になって仕方がありませんでした。

相手のペースに合わせる「引き算」の学び

翌日の夜、マキさんから返信が届きました。

「taroさん、はじめまして!メッセージありがとうございます。私も登録したばかりでドキドキしていました。taroさん、文章から優しさが伝わってきて安心しました(^^) 串カツとか焼き鳥、いいですよね!」

返信が来た嬉しさで、私はまたパニックになりました。 「すぐに返さなきゃ!」と思い、キーボードを叩きます。

「返信ありがとうございます!串カツ最高ですよね!僕は〇〇駅の近くの店によく行きます。マキさんは普段どのあたりで飲むんですか?今度ぜひ一緒に行きましょう!」

……送ろうとして、寸前で指を止めました。 「待て待て、これじゃガツガツしすぎだ。まだ一通目なのに、もうデートに誘うなんて肉食すぎて引かれるぞ」

初心者がやりがちな「即レス・長文・質問攻め」の罠に片足を突っ込んでいたことに気づいたのです。 50代の私に求められているのは、きっと若い頃のようなグイグイ行く勢いではなく、相手を安心させる「大人の余裕(引き算)」のはず。

私は深呼吸をして、文章を書き直しました。

「マキさんも初心者なんですね、お互い仲間がいて良かったです(笑) 串カツにビール、最高ですね。マキさんはどんなおつまみが好きですか?お忙しいと思うので、お返事は手の空いた時で大丈夫ですよ」

相手が答えやすい質問を1つだけ入れ、最後に「返信はいつでもいいよ」という逃げ道を作る。 この試行錯誤のキャッチボールを、私は胃を痛めながら、毎晩数通ずつ、丁寧に、丁寧に繰り返していきました。

泥臭いやり取りの先に見えた、次のステップ

お小遣いの中でやりくりする50代おじさんと、寂しさを抱えた40代の主婦。 お互いにアプリの使い方もよく分からない初心者同士だからこそ、その拙くて真面目なメッセージのやり取りが、逆に強い信頼感を生んでいきました。

メッセージを始めて4日目。 マキさんの側から「taroさん、もし良かったらLINEでお話ししませんか?」という、信じられない提案が飛び出してきたのです。

ビギナーズラックから始まった私の潜行ミッションは、メッセージの試行錯誤という高い壁を乗り越え、ついに「LINE移行」という次のステージへ進むことになります。

(第2話「緊迫のLINE移行と、お小遣い予算内で収めるデート計画」へ続く)

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