【マキさん編・第2話】緊迫のLINE移行と、お小遣い予算内で収めるデート計画

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メッセージの試行錯誤の末、マキさんの側から「LINEでお話ししませんか?」と言ってもらえた時の興奮は、今でも忘れられません。お小遣い制の50代おじさんにとって、決して安くないアプリの利用料の元を取るどころか、大きな一歩を踏み出せた瞬間でした。

しかし、ここからが本当の「妻バレ対策」と、限られたお財布事情との本格的な戦いの始まりでした。

1. 緊迫のLINE移行と、深夜の隠蔽工作

マキさんから送られてきたLINEのQRコードを読み込み、友だち追加ボタンを押す時、私の手は少し震えていました。

「これで、妻に一番見られる危険性のあるLINEに、秘密の女性が入ってくる……」

登録して即座に、前回の「身バレ対策」で学んだ裏ワザを実行しました。マキさんのプロフィールを開き、表示名を本名から「鈴木(課長)」に変更。これなら、万が一スマホの画面にポップアップ通知が一瞬表示されても、妻には「仕事の連絡か」と思わせることができます。

さらに、トーク履歴をこまめに「非表示」にする設定も徹底しました。

LINEに移ってからのマキさんは、アプリ内よりも少し言葉が柔らかくなり、日常のちょっとした出来事(今日作った晩ご飯のおかずや、パート先の愚痴など)を写真付きで送ってくれるようになりました。

家では完全に空気扱いの私が、スマホの向こうでは一人の「男性」として頼られ、毎日何通ものメッセージを交わしている。それだけで、いつもの退屈な通勤電車が、少しだけ誇らしい場所に思えてくるから不思議なものです。

2. 予算は限られている。冷や汗もののデート計画

LINEが始まって3日目、ついに「今度、仕事帰りに軽く飲みに行きませんか?」という流れになりました。

嬉しい反面、私の脳内では「今月のお小遣いの残高計算」という現実的なパニックが起きていました。 毎月決まった額しか使えないお小遣いの中から、デート代を捻出しなければなりません。

「既婚者アプリのデートって、やっぱり男が全額奢るのがマナーだよな……」 「お洒落なバルとかビストロに行ったら、1回で今月のお小遣いが大ピンチになる。もし2軒目なんてことになったら破産だ」

見栄を張って高級店を予約するか、それとも身の丈に合った店にするか。私はまた、スマホを前にして頭を抱えました。

ここで私は、第1話のビギナーズラックを信じて、もう一度「等身大の正直さ」で勝負することにしました。マキさんの自己紹介文にあった「赤提灯が好き」という言葉を信じることにしたのです。

「マキさん、来週の木曜日の夜、もしよければ○○のガード下にある、僕の行きつけの串カツ屋に行きませんか? お洒落なお店じゃなくて恐縮ですが、1本100円から揚げたてが食べられて、ホッピーが最高に美味しい、おじさん臭いお店なんです(笑)」

送信してから、「やっぱりケチなおじさんだと思われたかな……」と冷や汗が出ました。

しかし、マキさんからの返信は、私の不安を吹き飛ばすものでした。

「わあ、串カツ屋さん!最高ですね!私、そういうガヤガヤしたお店、夫が『落ち着かないから』って絶対に連れて行ってくれないので、すごく行ってみたかったんです!taroさんとホッピーで乾杯できるの、楽しみにしています(^^)」

見栄を張らずに、自分のホームグラウンド(確実に予算がコントロールできるリーズナブルな店)に巻き込む。これが、お小遣い制50代会社員が生き残るための、最大の生存戦略だと学びました。

3. 週末の夜、ベランダでの初通話

デートの前々日の土曜日。妻がリビングでテレビに夢中になっている隙を見計らい、私は「タバコを吸ってくる(※実際は禁煙中ですが、外に出る口実)」と言ってベランダに出ました。

マキさんから「少しだけ声が聞きたいな」とLINEが来ていたのです。

イヤホンを耳に押し込み、通話ボタンを押します。

「あ、taroさん? もしもし!」

受話器から聞こえてきたのは、少し高めの、弾むような可愛らしい女性の声でした。

「はじめまして、taroです。夜遅くにすみません、ちょっと外に出ていて」 「ううん、声が聞けて嬉しいです!taroさん、文章のイメージ通り、すごく落ち着いた優しい声をされていますね」

夜風に吹かれながら、暗いベランダで聞く女性の甘い声。 家の中からは、妻が見ているバラエティ番組の笑い声がかすかに聞こえてきます。その奇妙なスリルと、何年ぶりか分からない「一人の男」として扱われている高揚感で、私の脳は完全に痺れていました。

「木曜日、楽しみにしていますね」 「うん、僕も楽しみにしています。気をつけて来てね」

通話を切り、リビングに戻ると、妻は相変わらず私の方を見向きもせずにテレビを見ていました。 「俺は、この日常のすぐ裏側にある、別の世界への切符を手に入れたんだ」

限られた予算を賢くやりくりする計画を胸に、私は決戦の木曜日へと向かう心の準備を整えました。

(第3話「予算を抑えた赤提灯デート。おじさんの『聞き上手』が炸裂した夜」へ続く)

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